サーモウェルは熱電対、サーミスタ、バイメタル温度計などの温度センサーを過剰な圧力、材料速度、腐食に起因する損傷から保護するためのものです。また、システムのドレンを行うことなくセンサーを交換できるため異物混入のリスクが低減し、センサーの長寿命化を図ることができます。高圧用途向けサーモウェルは主に棒材を機械加工して製作しているため健全性を確保することができます。低圧環境向け小型サーモウェルは管材を加工し片端を溶接で密閉しています。
サーモウェルの種類
サーモウェルはステム部の設計で分類されています。ストレート形サーモウェルは挿入部の径が全長に渡り均一に設定され、腐食や壊食から保護します。段付き形サーモウェルは主に上端部の径が¾"、先端部の径が½"と細くなっています。表面積が小さいため速度が円滑でセンシング・デバイスの温度応答が迅速です。テーパー付きサーモウェルは挿入部の径が徐々に小さくなっています。温度変化に対する応答時間が短く強度が高いことが特長です。高速度用途で最も多く使用されているのがテーパー付きサーモウェルです。天然ガスのパイプラインに使用されているストレート形サーモウェルとテーパー付きサーモウェルの事例研究でストレート形熱電対は流れに起因する振動に暴露されたときに故障が早期に発生することが判明しました。
接続の種類
サーモウェルをRTD、サーミスタ、熱電対のヘッド部に接続する方法は複数あります。最も一般的な種類をご紹介いたします。
- ねじ式
- 溶接
- 差込み溶接
- Oリング
- フランジ型
ねじ接続部は溶接や蝋付けが可能な素材でつくられ、強度が高くなっています。ねじ部からの異物混入を回避する必要がある食品産業や製薬産業などの工程では溶接接合が最も一般的です。Oリング接続はタンクに溶接されたスリーブの内部をOリングで密閉します。ANSI B16.5フランジ型サーモウェルの二重溶接構造は内側と外側からオープン継手を密閉し、クレビス部への腐食物質の混入を防止しています。
内径
数種類の計器類が混在する工程では標準内径を選択すると柔軟性が向上します。1台のサーモウェルで熱電対、RTD、バイメタル温度計、試験用温度計のいずれにも対応可能です。下記の標準内径は一般的な測温機器に対応可能です。
0.26" diameter bore:
¼" stem bimetal thermometers
#20 gauge thermocouples unarmored liquid in glass test thermometers other devices with a maximum diameter of 0.25"
0.385" diameter bore:
#14 gauge thermocouples armored liquid in glass test thermometers other devices with a maximum diameter of 0.35"
0.26" diameter bore:
¼" stem bimetal thermometers
#20 gauge thermocouples unarmored liquid in glass test thermometers other devices with a maximum diameter of 0.25"
0.385" diameter bore:
#14 gauge thermocouples armored liquid in glass test thermometers other devices with a maximum diameter of 0.35"
材料の選定
適正材料を選定することはサーモウェルの寿命にとって極めて重大です。サーモウェルに直接触れる薬品の種類、温度、流量を検討した上で材料を指定しなければなりません。薬品は濃度や温度が高くなると腐食性が高くなります。また、流体に含まれる浮遊粒子も壊食の原因となります。下記の一覧のサーモウェル構造材料は最もよく使用されている材料です。:
- 炭素鋼
- クロム鋼、モリブデン鋼
- 差込み溶接
- 差込み溶接
- インコロイ®
- インコネル®
- モネル®
- ハステロイ®
- ヘインズ® 合金
- チタン
炭素鋼は耐食性が低いため用途が低温・低圧用に限定されています。最も一般的に使用されるサーモウェル材料はステンレス鋼です。ステンレス鋼製のサーモウェルは費用効率が良く、耐熱性や耐食性に優れています。クロム鋼やモリブデン鋼は加圧容器向けの高強度のステンレス鋼です。モリブデンを添加することで耐食性が向上します。ヘインズ合金の成分はコバルト、ニッケル、クロム、タングステンです。硫化、炭化、塩素系環境で最もよく使用されています。
挿入長さ
サーモウェルの接続部から先端までの距離が挿入長さです。最大限の精度を確保するには、測定時に測定機器の感温部全体が媒体に届くように十分な挿入長さが必要です。温度センサーで液体温度を測定する際に感温部の全長に1インチ以上を加算した長さを溶液に浸漬させることをお勧めします。ガスやエアの場合、感温部の全長に3インチを加算した長さを浸漬させることをお勧めします。熱電対やサーミスタの感温部は短いため、挿入長さが短いサーモウェルの使用が可能です。バイメタル温度計、RTD、液体封入ガラス温度計の感温部は1~2”のため、許容精度を満たすためにも2½"以上を液体に浸漬させてください。
まとめ
各種測温機器は流れ、熱、圧力に曝されると劣化しやすくなります。過酷な加工環境下で長期間使用するとセンサーの性能だけでなく構造上の健全性も影響を受けます。例えば、熱電対プローブの製作に使用される金属は腐食環境に対して脆弱です。また、平均径0.10 to 0.20"の熱電対ワイヤー部は熱に長期間曝されると金属組織が変化します。サーモウェルは工程環境に起因する損傷から測定センサーを保護し、測定ドリフトを防止します。重要工程の温度データについては温調計などの記録機器で文書を作成することをお勧めします。また、こうした工程に使用されている温度センサーは定期的に校正を実施して精度を確認することをお勧めします。乾式ブロック・プローブ校正器はサーミスタ、熱電対、RTDのプローブのNIST追跡可能な校正を行うことができます。サーマル・カメラや高温計などの非接触機器や赤外線黒体校正器の精度は1%ですが高い繰り返し精度を誇ります。社内校正が可能となるため、被認定AS17025校正ラボは採用方式のNIST追跡可能性を確保する必要があります。