技術概要
比例積分微分(PID)制御は、システムを、目標とする位置やレベルに導くための確立された方法です。特に、温度制御手段として広く普及し、数多くの化学および科学プロセス、さらにオートメーション分野で用いられています。ただし、PID制御は問題がない訳ではありません。目標値が変化する状態、例えば、ステップ運転、または”ランプ(勾配部分)&ソーク(一定部分)”プロファイルなどの場合、理想的な結果を出せません。
性能改善のために、一部の測定機器メーカーは、プロセス制御に”ファジー論理”を利用する方法を探求しています。このOMEGA Engineeringのホワイトペーパーでは、PIDシステムの弱点とファジー論理の潜在的利点の両方を、特に温度制御の問題を中心に考察します。各セクションの内容は以下のとおりです:
性能改善のために、一部の測定機器メーカーは、プロセス制御に”ファジー論理”を利用する方法を探求しています。このOMEGA Engineeringのホワイトペーパーでは、PIDシステムの弱点とファジー論理の潜在的利点の両方を、特に温度制御の問題を中心に考察します。各セクションの内容は以下のとおりです:
- PID制御ループの基本
- PIDの課題
- 制御に対するファジー論理の導入
- PID+適応型ファジー論理
- 用途
PID制御ループの基本
制御ループフィードバックの最も基本的な形は、温度などの出力を測定して、目標値と比較することです。これらの値の差に基づき、補正係数を算出して入力に適用します。オーブンが必要温度より低い場合、加熱をおこないます。比例制御(略語”PID”の最初の”P”)において、補正係数は差に比例します。結果として、差がゼロに近付くにつれ、適用する補正係数もゼロを目指すので、目標値は決して得られません。
積分処理(略語”PID”の2番目の”I”)により、これを修正します。”P”処理の結果の誤差を効果的に累積し、これを利用して補正係数を増やします。オーブンが必要な温度より依然として低い場合、”I”処理によりさらに加熱します。ただし、目標値に達したとき加熱を停止するのではなく、”I”は、累積誤差をゼロに導くため、結果はオーバーシュート(行き過ぎ)になります。
略語の3番目”D”である微分が、オーバーシュートを最小化します。その方法は、目標値に近付くにつれ、適用する補正係数を低くすることです。
積分処理(略語”PID”の2番目の”I”)により、これを修正します。”P”処理の結果の誤差を効果的に累積し、これを利用して補正係数を増やします。オーブンが必要な温度より依然として低い場合、”I”処理によりさらに加熱します。ただし、目標値に達したとき加熱を停止するのではなく、”I”は、累積誤差をゼロに導くため、結果はオーバーシュート(行き過ぎ)になります。
略語の3番目”D”である微分が、オーバーシュートを最小化します。その方法は、目標値に近付くにつれ、適用する補正係数を低くすることです。
PIDの課題
PID制御方程式の数学は、複数の変数と定数が相互に作用して複雑です。どの用途でも、プロセス自身と測定機器に起因する制限の範囲内で、可能な限り目標値に近付くように値が選択されます
ほとんどのプロセス制御用途で、共通する3つの問題があります:
ほとんどのプロセス制御用途で、共通する3つの問題があります:
- 時間の遅れ、すなわちラグ
- ステップ運転の応答
- ランプ&ソーク”運転の応答
多くの条件において、出力は、入力の変化に対して長い時間をかけて様々に応答します。一例として、炉に新しい材料を入れると炉の温度は低下し、所定温度に戻るまで数分間を要します。これは温度のオーバーシュートにつながり、材料を損傷する恐れがあります。反対に、加熱が遅すぎるとプロセス効率が低下し、製品や材料に悪影響を与えます。
目標値が瞬時に変化する場合、PIDは、システムが大きな補正係数を適用するように指示し、再びオーバーシュートにつながります。あるいは、システムが飽和状態になり、”I”処理の影響に対して、十分な補正をおこなえなくなります。
また、温度が漸次上昇して保持される”ランプ&ソーク”条件でも、これらの問題が生じます。漸次変化する設定点に対する追従は、PID制御システムの課題です。
結果として、最適な値を選択することは、”調整”と呼ばれる試行錯誤プロセスです。 長年、調整に関して数多くの方法が開発されましたが、最も満足できるのは”ジーグラ・ニコルス”法のようです。ただし、この方法は高い振動を発生し、一部の条件では問題になります。
目標値が瞬時に変化する場合、PIDは、システムが大きな補正係数を適用するように指示し、再びオーバーシュートにつながります。あるいは、システムが飽和状態になり、”I”処理の影響に対して、十分な補正をおこなえなくなります。
また、温度が漸次上昇して保持される”ランプ&ソーク”条件でも、これらの問題が生じます。漸次変化する設定点に対する追従は、PID制御システムの課題です。
結果として、最適な値を選択することは、”調整”と呼ばれる試行錯誤プロセスです。 長年、調整に関して数多くの方法が開発されましたが、最も満足できるのは”ジーグラ・ニコルス”法のようです。ただし、この方法は高い振動を発生し、一部の条件では問題になります。
制御に対するファジー論理の導入
従来の演算はブール論理、つまりすべてを0か1で表す方法に基づいていました。一部の条件において、これは過度の単純化につながり、不適切な結果を招きます。ファジー論理、そしてこれを拡大したファジー制御の場合、問題に対して人間の認識により近いヒューリスティックスを採用することで複雑さに対処します。
ファジー論理は、複雑な制御条件において、不正確さと非直線性を処理する手段を提供します。入力が”推論エンジン”に渡され、人間または経験に基づく規則が適用されて出力が生まれます。
ファジー論理は、複雑な制御条件において、不正確さと非直線性を処理する手段を提供します。入力が”推論エンジン”に渡され、人間または経験に基づく規則が適用されて出力が生まれます。
PID+適応型ファジー論理
PIDループの調整はヒューリスティックスに依存していますが、しばしば準最適で終わります。ファジー論理は、ジーグラ・ニコルス法などに対する代替手段を提供し、また新たな研究組織が、よりすぐれた結果を生み出しています。従って、多くの複雑なプロセスを制御する理想的な方法は、ファジー論理で調整したPIDコントローラを使用することだと考えられます。
このような手法を組み込んだ市販製品の一つが、OMEGA® Platinumシリーズの温度およびプロセスコントローラです。コンパクトなマイクロプロセッサベースのPIDコントローラシリーズは、3種類のDINサイズがあり、設定ならびに使用ともに簡単です。一般的な熱電対およびRTDのすべてを接続でき、選択した入力タイプに対応する機能だけを、システムが自動的に有効にします。電圧と電流入力も可能で、ほぼすべてのエンジニアリングユニットで使用できます。これらのコントローラはPIDソリューション一式を提供し、最大16のランプ&ソークシーケンスを含む複雑なプログラムをサポートします。PID用途について、適応型ファジー論理による自動調整が可能で、最適な結果を得ることができます。
このような手法を組み込んだ市販製品の一つが、OMEGA® Platinumシリーズの温度およびプロセスコントローラです。コンパクトなマイクロプロセッサベースのPIDコントローラシリーズは、3種類のDINサイズがあり、設定ならびに使用ともに簡単です。一般的な熱電対およびRTDのすべてを接続でき、選択した入力タイプに対応する機能だけを、システムが自動的に有効にします。電圧と電流入力も可能で、ほぼすべてのエンジニアリングユニットで使用できます。これらのコントローラはPIDソリューション一式を提供し、最大16のランプ&ソークシーケンスを含む複雑なプログラムをサポートします。PID用途について、適応型ファジー論理による自動調整が可能で、最適な結果を得ることができます。
用途
開ループ制御でない限り、ほぼすべてのプロセス制御用途は、PID制御の恩恵を受けることができます。温度制御では、以下のような好例があります:
- 金属の熱処理。必要な冶金学特性を得るために、”ランプ&ソーク”シーケンスは正確な制御が必要です。
- 塗装面の溶剤の乾燥/蒸発。過熱状況は下地に損傷を与え、一方低温は、製品に損傷を与え、外観を損なう恐れがあります。
- ラバーの硬化。高精度の温度管理により、材料特性に悪影響を与えることなく、確実な硬化を実現できます。
- ベーキング。必要な反応を得るために、商用炉は、厳格に定められた加熱/冷却シーケンスに従う必要があります。
- セラミクス。連続焼成窯は、変化する熱負荷を受けながら高温を供給しなければなりません。このため、PID制御の理想的な用途と言えます。
さらに、多くの科学的および化学的プロセスが、慎重かつ正確な温度制御に依存しています。
主な考慮事項
閉ループ制御は、プロセスからの出力を、可能な限り目標値または設定点に近付けるように努めます。
PID制御は、このような制御を実現するための確立された方法ですが、最適性能のためには調整が必要です。このような調整は複雑で難しいので、ジーグラ・ニコルス法などのヒューリスティックス技術が通常採用されます
ステップ運転、または”ランプ&ソーク”制御を必要とするプロセスは、従来のPID技術では特に対応が困難です。これに対処するため、OMEGAなどのコントローラメーカーは、ファジー論理に基づく自動調整機能を組み込んでいます。先進の演算技術の採用により、PIDループの最適化がおこなわれ、高いレベルのプロセス制御を実現しています。
PID制御は、このような制御を実現するための確立された方法ですが、最適性能のためには調整が必要です。このような調整は複雑で難しいので、ジーグラ・ニコルス法などのヒューリスティックス技術が通常採用されます
ステップ運転、または”ランプ&ソーク”制御を必要とするプロセスは、従来のPID技術では特に対応が困難です。これに対処するため、OMEGAなどのコントローラメーカーは、ファジー論理に基づく自動調整機能を組み込んでいます。先進の演算技術の採用により、PIDループの最適化がおこなわれ、高いレベルのプロセス制御を実現しています。